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広島地方裁判所 昭和40年(行ウ)4号 判決 1967年4月25日

原告 脇本彰 外四名

被告 呉市長 外二名

主文

一、原告十河の訴及び原告脇本の被告呉市長に対する支出行為取消の訴を却下する。

二、被告松本は呉市に対し金一、八〇七、五三〇円及びこれに対する昭和三六年七月三〇日から完済まで年五分の割合による金員並びに金一、九七五、〇〇〇円に対する昭和三四年一二月一五日から昭和四〇年一月三一日まで年五分の割合による金員を支払え。

三、原告脇本のその余の請求並びに原告橋本、原告山田、原告植木の各請求を棄却する。

四、訴訟費用中原告脇本が支出した費用を二分し、その一を被告松本の負担とし、被告松本が支出した費用を四分しその一を原告脇本、その一を原告十河の各負担とし、被告呉市の支出した費用は原告脇本、原告十河の負担とし、被告奥原の支出した費用は原告らの負担とする。

五、この判決は第二項に限り仮に執行することができる。

事実

当事者双方の申立、事実上、法律上の陳述、証拠の関係は次の第一、第二、第三のとおりである。

第一、申立

(原告脇本、十河の求める裁判)

一、被告呉市長が昭和三四年一〇月開催の呉市臨時市議会の議決に基づいて、前期呉市会議員(昭和三〇年五月一日から昭和三四年四月三〇日まで任期のもの)に対して記念品料及び旅費名義で合計金三、七八二、五三〇円を支出した行為を取消す。

二、被告松本、被告奥原は呉市に対し各自金三、七八二、五三〇円及び内金一、九七五、〇〇〇円に対する昭和三四年一二月一五日から、内金一、八〇七、五三〇円に対する昭和三六年七月三〇日から各完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

三、訴訟費用は被告らの負担とする。

右のうち金員支払請求部分につき仮執行の宣言。

(原告橋本、山田、植木の求める裁判)

一、被告奥原は呉市に対し金一、八〇七、五三〇円及びこれに対する昭和三六年七月三〇日から完済に至るまで年五分の割合による金員並びに金一、九七五、〇〇〇円に対する昭和三四年一二月一五日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二、訴訟費用は被告奥原の負担とする。

右請求につき仮執行の宣言。

(被告らの求める裁判)

本案前の申立として、

一、本件訴をいずれも却下する。

二、訴訟費用は原告らの負担とする。

本案についての申立として、

一、原告らの請求をいずれも棄却する。

二、訴訟費用は原告らの負担とする。

第二、主張

(原告らの請求原因及び抗弁事実に対する陳述)

一、原告らは、いずれも普通地方公共団体である呉市の住民であり、被告松本は昭和三四年当時呉市長の職にあつたもの(昭和三六年一〇月三一日辞任)であり、被告奥原は昭和三六年一一月二〇日呉市長に就任したものである。

二、呉市議会は昭和三四年一〇月頃被告松本(当時呉市長)と被告奥原(当時呉市議会議長)の主導のもとに、呉市が前期呉市会議員(昭和三〇年五月一日から昭和三四年四月三〇日まで任期のもの)に対して記念品料として一人五万円(但し在職年限の少ない者、死亡者の遺族に対しては適宜減額する。)宛、旅費として一人約五万円宛支出する件の議決を行なつた。

三、当時の呉市長松本は再審議の申立をすることもなく右議決に基づいて、昭和三四年一一月一六日、同月一九日、同年一二月一四日右前期議員に対して記念品料として合計金一、九七五、〇〇〇円を交付し、さらに昭和三四年一二月八日頃から昭和三六年七月二九日までの間に右議員に対し旅費として合計金一、八〇七、五三〇円を支給した。

四、右各金員の支給は実質的には前期議員に対する退職金の支給であり、右は何ら法律上の根拠に基づくものではないから地方自治法第二〇四条の二に照らし違法なものというべきであり、右支出行為により呉市は右支出金額と同額の損害を被つた。

五、被告奥原は、昭和三六年一一月二〇日呉市長に就任したが、呉市が右違法な支出行為の悪意の受益者である右前期議員らに対し、右受領金員及びこれに対する年五分の割合による法定利息金の返還請求権を有しているにもかかわらず、これらの督促、取立等市長としての職務を怠つており、ために一部受領者はその資力を失い、あるいは弁済を免れる態度にでるようになり、あるいは右返還請求権が消滅時効にかかる等、右債権の取立が不可能となり、もつて呉市に対し右債権額相当の損害を被らせた。

六、そこで、原告十河は昭和三五年八月一九日地方自治法第二四三条の二(昭和三八年法律第九九号により改正される前のもの、以下旧法という)に基づき、呉市監査委員に対し、前記違法支出について監査請求をしたところ、右監査委員は同年九月七日何らの処置をしない旨の回答をなした。原告脇本は昭和三九年九月九日、原告橋本、山田、植木は昭和四〇年一月二五日及び同年五月一日の二回にわたり、地方自治法第二四二条(前記改正法による改正後のもの、以下新法という)に基づき呉市監査委員に対し原告十河と同旨の監査請求を行つたが、右監査委員は何らの回答をしない。なお右五月一日付の監査請求書は受理すらされていない。

七、よつて、原告十河、脇本は被告呉市長に対して前記違法支出行為の取消を、呉市に代位して被告松本、奥原に対して前記違法支出及び返還請求権不行使による不法行為に基づく損害賠償として呉市に対し各自金三、七八二、五三〇円及び内金一、九七五、〇〇〇円に対する不法行為後である昭和三四年一二月一五日から、内金一、八〇七、五三〇円に対する不法行為後である昭和三六年七月三〇日から各完済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。原告橋本、山田、植木は呉市に代位して被告奥原に対し、前記不当利得返還請求権不行使による不法行為に基づく損害賠償として、呉市に対し金一、八〇七、五三〇円及びこれに対する不法行為後である昭和三六年七月三〇日から完済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金並びに金一、九七五、〇〇〇円に対する不法行為後である昭和三四年一二月一五日から完済まで民法所定年五分の割合による遅延損害金の各支払を求める。

八、被告ら主張の記念品料として支出した一、九七五、〇〇〇円を各受領者が呉市に返還したとの事実は不知。

(被告らの本案前の主張)

一、原告らは、昭和三九年(行ウ)第三五号事件の訴状において記念品料の支出行為を請求原因としているが、昭和四〇年二月九日付訴の変更申立書、昭和四〇年六月一七日付準備書面において別の出張旅費の支給行為を請求原因となし、訴の変更をなした。右は請求の基礎を変更するもので異議がある。

二、原告十河の訴は地方自治法第二四三条の二(旧法)、行政事件訴訟特例法第五条所定の出訴期間経過後のものであり、原告脇本、橋本、山田、植木の各監査請求は新法第二四二条第二項所定の期間経過後のものであり、さらに原告脇本の訴は、請求の変更により新法第二四二条の二第二項第三号所定の訴提起期間を徒過し、いずれも不適法な訴というべく却下されるべきである。

(被告らの事実に対する答弁及び抗弁)

一、請求原因一の事実は認める。同二の事実中本件議決につき被告松本、奥原がこれを主導したとの事実は否認するが、その余の事実は認める。同三の事実は認める。同五の事実中被告奥原が本件記念品料、旅費の受領者に対しこれの返還を請求しないとの事実は認める。同六の事実は認める。

二、本件記念品料の贈呈は、議会の議決をえて前期議員の任期中の労を慰謝するためになしたもので、呉市のみならず全国にひろく行なわれているものであり、旅費の支給は前期議員に市政に対して協力を得るため慣例にしたがい視察旅行を委託し、その実費弁償として支給したもので、いずれも違法な公金の支出とはいえない。

三、記念品料として支出した一、九七五、〇〇〇円は、受領者がすべて呉市に返還した。

四、地方自治法第二三六条によると普通地方公共団体の有する金銭債権の消滅時効は五年であるところ、記念品料については昭和三九年(行ウ)第三五号事件が裁判所に提起された昭和三九年一二月四日から逆算して昭和三四年一二月三日以前の支出はすべて右時効期間が経過し、旅費については昭和四〇年(行ウ)第四〇号事件が裁判所に提起された昭和四〇年五月一日から逆算して昭和三五年四月三〇日以前の支出はすべて右時効期間が経過しているので、被告らは本訴において右時効を援用する。

第三、証拠関係<省略>

理由

一、被告らの本案前の抗弁について。

(一)  地方自治法に定めるいわゆる住民訴訟に関する規定は、昭和三八年法律第九九号によつて改正され(改正前は同法第二四三条の二、改正後は同法第二四二条の二、以下旧法、新法という)、新法第二四二条の二の規定は昭和三九年四月一日から施行(改正附則第一条)されたものであるところ、同改正附則第一一条によると、新法は原則として新法施行前の違法な財産の処分、管理についての訴訟にも適用され(同条第一項)、ただ新法施行の際現に係属している旧法に基づく訴訟については旧法による(同条第二項)ものと規定されている。そして、右規定は新法施行後の住民訴訟について旧法を適用するのは訴が新法施行時に係属している場合に限る趣旨であつて訴の前提としてなされる監査請求に対する審査が旧法に基づいてなされたとしても、訴が新法施行後に提起されたものである以上、新法を適用して裁判すべきものと解するを相当とする。そこで、本件各訴についてみるに、脇本、十河は昭和三九年一二月四日橋本、山田、植木は昭和四〇年五月一日に各提起したものであることが記録上明らかであるから、本件各訴は新法を適用して審理、裁判すべきである。(なお、新法第二四二条の二第四項によると、住民訴訟がすでに係属しているときは、他の住民は別訴をもつて同一の請求をすることができないと規定されているところ、橋本、山田、植木の請求は脇本、十河の請求と同一であり、別訴提起は不適法というべきであるが、右規定は係属中の住民訴訟に他の住民が民事訴訟法第七五条の共同訴訟参加人として参加することを許さない趣旨とは解しがたいから、右三名を本件訴訟の共同訴訟参加人として取扱う。)

(二)  そこで、原告十河の訴につき案ずるに、その主張によると、本件事案について十河は昭和三五年八月一九日呉市監査委員に対し監査請求をなし同年九月七日同委員会から回答を受けたというのであり、本件訴の提起は前記のとおり昭和三九年一二月四日であるから新法第二四二条の二第二項第一号所定の監査結果の通知後三〇日以内の訴提起でないことが明らかであり、右規定に照らし不適法な訴といわねばならず、その余の点につき判断するまでもなく訴却下を免れない。

(三)  原告脇本の訴につき案ずるに、同人は昭和三九年九月九日に右同様の監査請求をしたところ、何らの回答を得られなかつた(当事者間に争いがない。)ものであるところ、前記改正附則第一一条第一項によると新法第二四二条第二項の監査請求を適法になしうる一年の期間は新法施行の日から起算するものとされ、同人の監査請求は適法なものであり、新法第二四二条の二第二項第三号によると、監査委員が監査請求に対して監査、勧告を行なわない場合は、監査請求の日から六〇日を経過した日から三〇日以内に住民訴訟を提起しうるものと定められており、原告脇本の訴は右出訴期間経過前に提起されたものというべきである。なお、被告らは脇本は本件訴訟において訴を変更したところ、右は請求の基礎を変更するものであるから不当であり、かつ右訴変更により前記出訴期間を経過したと主張するのであるが、同人提出の訴状記載の請求原因によると、昭和三四年一〇月呉市臨時市議会における前期議員に対する記念品料支給についての議決、旅費一人五万円の範囲で行政視察を依頼する件の議決の各違法性を主張しており、(昭和四〇年二月九日付訴の変更申立書においても、右主張を変更していない)ただ請求の趣旨において右のうち記念品料支出行為の取消と各支出金の補てんを請求していたところ、昭和四〇年六月一七日付準備書面において請求の趣旨に右旅費の支出行為の取消とその補てんを加えるとともに請求原因をさらに補充更正して明確にしたものと認められる。そして、右請求の趣旨追加の経過は、被告呉市長が昭和四〇年三月一五日付答弁書で、前記旅費支給の日時、金額等を具体的に明らかにしたので、これにしたがつて右請求の趣旨追加をなしたものであることが記録上認められ、右の如き措置は住民訴訟の性質上やむをえないものであり、本件請求の趣旨変更はいわゆる請求の拡張であつて訴訟物に異動はなく、請求の基礎に変更なきことはもちろん、出訴期間については右拡張後の請求についても訴状提出のときを基準にすべきであり、この点についての被告らの主張は理由がない。もつとも、原告脇本はその請求の趣旨第一項において、被告呉市長に対し本件各支出行為の取消を求めているが、予算の執行の如き単なる事実行為をこれがなされた後に取消すことは無意味であり、新法第二四二条の二第一項第二号所定の行政処分に当らないと解するを相当とするから、脇本の右訴部分は不適法であり却下を免れない。

(四)  原告橋本、山田、植木の各訴につき案ずるに、同人らの請求は、被告奥原に対し、奥原が市長として市の財産管理を怠つたことによる市の損害の補てんを求めていることがその主張から明らかであるところ、怠る事実についての監査請求は、その性質上怠る事実が継続している限りいつでもなし得るものと解すべきであり、橋本、山田、植木は昭和四〇年一月二五日及び同年五月一日の二回にわたり監査請求をなしたが回答をえられなかつたこと、右各日時頃被告奥原は呉市長に在任していたことは当事者間に争いがなく、橋本、山田、植木の本件訴は適法なものというべきである。

二、原告脇本の被告松本に対する請求について。

(一)  呉市議会が昭和三四年一〇月頃前期呉市会議員(昭和三〇年五月一日から昭和三四年四月三〇日まで任期のもの)に対して、記念品料として一人五万円(但し在職年限の少ない者、死亡者の遺族については年限に応じて減額)宛、視察旅行の旅費として一人五万円を限度に支給する旨の議決をなし、右議決に基づいて当時の呉市長被告松本が昭和三四年一二月一四日までに記念品料として合計金一、九七五、〇〇〇円を支出したこと、旅費として昭和三四年一二月頃から昭和三六年七月二九日までに合計金一、八〇七、五三〇円を支出したことは当事者間に争いがない。

ところで、地方自治法第二〇三条、第二〇四条、第二〇四条の二によれば普通地方公共団体は、いかなる給与その他の給与も法律又はこれに基づく条例に基づかずには常勤非常勤の職員に支給することができないと定められているところ、任期終了後の議員に対し記念品料の支給を許容し、あるいは行政視察を委託してその費用弁償を許容する(地方自治法第二〇三条第一項、第三項参照)が如き法律の規定はなく、また議会の議員は退職年金、退職一時金を受けることはできないものである(地方自治法第二〇五条参照)から、前示各議決は地方自治法第二〇四条の二に照らし違法なものというべく、右議決に基づく被告松本の前示各支出行為もまた違法なものといわねばならない。そして、被告松本は市長として前記各法条を十分知悉していたものと認めうるから、被告松本は故意又は過失によつて呉市に対し前示支出金額と同額の損害を被らせたこととなり、不法行為に基づく損害賠償責任を免れることはできない。

(二)  被告松本は右損害賠償請求権につき消滅時効を援用するので案ずるに、呉市が被告松本に対して有する右請求権は民法第七〇九条の不法行為に基づく損害賠償請求権でありその消滅時効については民法第七二四条によるものと解するを相当とするところ、同条前段の三年の短期時効の起算点は「被害者または法定代理人が損害及び加害者を知りたる時より」と規定され、右損害を知るとは損害の発生のみならず加害行為が不法行為であることをも知る意味と解せられるが、弁論の全趣旨によれば呉市(代表者である市長は昭和三六年一〇月三一日まで被告松本、昭和三六年一一月二〇日以降被告奥原)は、前記各支出時以後現在まで右各支出行為を適法なものと認めて本件損害賠償請求権を行使していないものと認定でき、右によれば呉市はいまだ加害行為が不法行為によるものであることを知つていないと解され、前記三年の短期時効は進行していないものと認められ、また本件請求権が発生後民法第七二四条後段の不法行為の時より二〇年を経過していないことは明らかであり被告松本の右時効の抗弁は理由がない。

(三)  次に、被告松本は、本件記念品料は各受領者において呉市に返還したと主張するので案ずるに、成立に争いがない乙第九号証の一、二と弁論の全趣旨によれば、本件記念品料全額(但し、利息を含まない)金一、九七五、〇〇〇円が昭和四〇年二月までに呉市に返還され、昭和三九年度呉市一般会計補正予算、水道事業会計補正予算、交通事業会計補正予算にいずれも雑収入として受けいれられたことが認められ、右認定を覆すに足る主張、立証はない。

(四)  以上説明のとおりであつて、被告松本は呉市に対し不法行為に基づき前示違法支出金中一、八〇七、五三〇円及びこれに対する不法行為後である昭和三六年七月三〇日から完済まで民法所定年五分の割合による遅延損害金並びに一、九七五、〇〇〇円に対する不法行為後である昭和三五年一二月三〇日から前示弁済前である昭和四〇年一月三一日まで民法所定年五分の割合による遅延損害金を支払う義務があり、原告脇本の地方自治法第二四二条の二第一項第四号に基づく被告松本に対する本訴請求は右の限度で理由があるからこれを認容すべく、その余は理由がないから棄却すべきである。

三、原告脇本、橋本、山田、植木の被告奥原に対する請求について。

(一)  原告らは、被告奥原は前示松本の不法行為の共同不法行為者である旨主張し、その理由として本件前期議員に対する各金員支給を松本とともに主導したというのである。しかしながら、議会の表決の責任は議員各人が負うべきものであり、松本、奥原が右支給に積極的に賛意を表したというのみで議決について責任を負わされるいわれはなく、また予算の執行は市長の専権であり、前記支出行為についての責任はこれをなした当時の市長松本のみが負うべきものであつて、原告らの右主張は採用できない。

(二)  被告奥原は昭和三六年一一月二〇日呉市長に就任したが現在に至るまで本件各違法支出金の受領者である前期議員に対し受領金の返還を請求していないことは当事者間に争いがなく、右によれば被告奥原は市長として呉市の財産の管理を怠つたものというべきである(なお、本件各支出行為は前示のとおり何ら法律上の原因なきものであり、呉市が右受領者に対し不当利得返還請求権を有することはいうまでもない)が、右怠る事実と本件支出行為による呉市の損害との間に因果関係を認めることはできない上呉市は現在なお右各受領者に対し不当利得返還請求権を有し(したがつて、原告ら呉市の住民は地方自治法第二四二条の二により受益者に直接不当利得返還請求の訴を提起しうる。)証人久保ユキの証言をもつてしても、被告奥原の右怠る事実により呉市が損害を被つたとの事実を認めがたく、他に被告奥原の怠る事実による損害を認めるに足る証拠はない。

(三)  そうすると、右原告らの被告奥原に対する不法行為に基づく損害賠償請求は損害発生について立証がないことに帰し棄却されるべきである。

四、よつて、民事訴訟法第九二条、第八九条、第一九六条第一項を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 長谷川茂治 雑賀飛龍 河村直樹)

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